タイトル勝

「名乗る程の者ではありませんが、
タイマンゴルファー勝と言います」

コミックス2

管理人の元にもすでに全巻は揃っていません。
ごくたまに古本屋に置いてある事もありますが
この作品を現在手に入れるのは困難でしょう。


いらっしゃいませ!!

ここは管理人による作品解説のページです。
ただし作品のあらすじやキャラクター紹介は
いっさい行っておりませんので悪しからず。
もし作品の内容を知りたいと言う奇特な方は
古本屋を回るか漫画喫茶でも捜して下さい。


それでは解説をどうぞ!!





『タイマンゴルファー勝』について

by 管理人

1.この作品が生まれたきっかけ

前作『麻雀白虎隊東』が終了した後、
僕に新たな担当編集者の人がつく事になった。
今はどうか良く知らないがマガジン編集部では、
作家一人に対して複数の編集さんがつく事になっていた。
前からの担当のS木さんに新しい担当のH田さん。
H田さんはS木さんの上司の編集者だそうだ。
この2人が僕の書く作品のこれからの方針を決める事になった。
当時まだ駆出しで、新人に毛の生えた程度の漫画家だった僕に、
自分の好きなものを書かせる余裕など無かったのだ。

ある日編集部で僕と編集さん達の3人で話をする事となった。
「前作が麻雀だったからなぁ、次もインパクトのあるものが欲しいよね」とS木さん。
「やっぱり勝負モノが良いんじゃないかな、絵柄にあってるし」とH田さん。
「けど、スポーツという雰囲気じゃないしなぁ……」とS木さん。
「君、何か書きたいテーマとか無いの?」とH田さんが僕に聞いて来た。
「はぁ……、スポーツはダメですか?柔道やレスリングなら書けるんですが」
「ダメダメ、暗いよ。まぁ絵柄は暗いんだけど」とS木さん。
話し合いはまとまりが無く暗唱に乗り上げてしまった。
重苦しい空気を取り払う為に僕は口を開いた。
「あの〜、勝負モノが良いんですよね?ギャンブルモノとか……」
「そうだね、何かいいアイディアがあるの?」S木さん。

「ゴルフはどうでしょうか?」
とにかく何でも良いから話し合いを先に進めたかった僕は、
「ゴルフはゴルフでも『賭けゴルフ』ですよ!!」
今思えばどうしてそこでゴルフが出たのか覚えてはいません。
ただ子供の頃に読んだ『プロゴルファー猿』のイメージが、
頭の中に多少浮かんだのかも知れない。
何しろその時僕はゴルフを全く知らなかったのだから。

「ゴルフって、君ゴルフを知ってるの?」とS木さん。
「いえ……、やった事はありません。ただ実家のすぐ近くに、
ゴルフ場があったなぁと思って考えたんですが」と僕は答えた。
「そうか、『賭けゴルフ』か。良いかも知れない!!」この時H田さんが声をあげた。
僕とS木さんは二人ともH田さんを見つめた。
「よし、ゴルフで行こう。これで決まり!!」H田さんは何だか嬉しそうだった。
こうして僕の次の作品はゴルフ漫画ということになった。

後で解った事だが当時H田さんはゴルフにハマッていて、
ゴルフ漫画を僕が書く事になれば取材という名目で、
会社のお金でコースに行ける、と考えたそうでした。
とにもかくにもH田さんの『鶴の一声』により、
タイマンゴルファー勝は生まれたのでした。





2.知らないという事は強い事?

前述しましたがこの漫画の連載前は僕は全然ゴルフを知りませんでした。
知らないがゆえに相当間違いを犯したものです。
ゴルフクラブを描き間違えたりするのはしょっちゅうで、
ゴルフのルールも知らない為ルールブックを見ながら
ネームを何度も書き直しました。
ただ読者の人からは間違いの指摘は無かったので、
「なんだ、読んでる人だって気付いてないじゃん」
とよく思ったものです。

『タイマンゴルファー勝』が掲載されたマガジンスペシャルは、
ゴルフ専門雑誌ではありませんので読者も
あまりゴルフに詳しくは無いはずです。
そこでゴルフの難しさをより解りやすくする為、
かなり無茶なコースを作ったりルールを変えたりしました。
あと『賭けるモノ』を釣り上げる事によって難しさを強調したり、
一番大袈裟だったのは優勝すれば1億円の賞金で、
負けた者は次々と命を落としていくというモノでした。

連載当初はとにかく現実にはあり得ない事でもいいから、
インパクトのあるハッタリを利かす事に終始しました。
その後の展開で勝はプロゴルファーになるのですが、
賭けゴルフの世界でやってた事の方が凄かったので、
普通のゴルフでいかに勝が失敗してしまうか
理由をつけるのに苦労したものです。




3.連載中はゴルフざんまい

この作品を生むキッカケを作ってくれた編集のH田さんの思惑通り、
連載中は何度か皆でゴルフコースに行く事になりました。
しかしろくに練習もせずにコースを回った感想はただ単に
「つ、疲れた〜」という感じでした。
何しろティーショットでボールがまともに飛んだホールは1つも無く、
スコアは150を超えた事は覚えているのですが、
最後はスコアを確認する事も忘れて、
ただただ打っては歩くだけで18ホールを回りました。

その後自己流では絶対に上手く行かないと思った僕は、
近所のゴルフスクールに通う事にしました。
スクールではY田さんと言うレッスンプロの人にお世話になりました。
そのスクールでは週に1回の室内打撃場でのレッスンの他に、
実際にコースに出るコースレッスンが月に1度くらい行われて、
僕は連載のあいだほぼ2年間ずっと通いました。

そのレッスンのおかげで2度目のスコアは130台となり、
次は120台、110台という具合に少しずつ減っていき、
連載終了の頃には何度か100を切る事ができる位になりました。
おまけに当時何度か行われた講談社ゴルフコンペにも参加して、
ドラコンの賞品を頂いたりとこの漫画の連載中は、
正にゴルフざんまいの日々を過ごす事ができました。




4.後から決まった設定の数々

僕自身がまだ漫画の純粋な読者だった頃は、
雑誌に連載されている漫画のタイトルや主人公の名前とかは、
きっと早い段階から決まっているモノだと思っていました。
少なくとも連載1回目の原稿が完成するまでには、
全て決まっているはずだろうと……。
ところが『タイマンゴルファー勝』に関しては
第1話の原稿が完成するまで正式タイトルは決まっていませんでしたし、
主人公の名前も決まっていませんでした。

とりあえず完成した原稿を持って編集部に行くと、
「そう言えばこの漫画のタイトル、どうしようか?」
と担当のS木さんに言われて僕なりに考えていた題名を言うと
「う〜ん、印象が薄いなぁ。もっとインパクトのあるのがいいよ」
ということで2人でいいタイトルは無いものかと考えました。
「勝負モノだから、勝つと言う事にこだわりたいよね」
「それにゴルフ漫画と言う事を解りやすくしたい」
S木さんの意見から『◯◯ゴルファー△△』という形は決まりました。

そして◯◯と△△になにを入れるかという事で、
「賭ゴルファーじゃストレート過ぎるし、裏ゴルファーも暗いし」
どうも僕はいいアイディアが浮かびません。その時S木さんが、
「ゴルフっていうのは一人でやるモンだから……、1対1の勝負、
てことで『タイマンゴルファー』というのはどうかな?」と提案しました。
すでに疲れ切っていた僕はちょっと引きながらも、
「ええ、構いませんが……、名前の方はどうします?」
ここでS木さんは得意そうに手を叩いて言いました。
「勝つ事が大事だからね、名前は『勝』にしよう、
『タイマンゴルファー勝』。これで行こう!!」。
こうして漫画のタイトルは決まりました。

その後の打ち合わせの時に僕はS木さんに聞いてみました
「ところで、『勝』って名字ですか?名前ですか?」。
S木さんはふと考えてから一言「どっちでもいいんじゃ無い、考えてよ」。
ということで後から主人公の名前は勝英雄と決まりました。
それは連載3回目の打ち合わせの時でした。

その他にもこの漫画は後から決まった設定が数多くあります。
主人公が何故賭ゴルファーになったのか?
主人公の生い立ちは?、年齢は?、学校には行ってるのか?などなど……。
これらの事は後から後から考えて行きました。
その頃の僕はまだ未熟だった為何度も編集さんと意見がぶつかりました。
印象的だったのは僕がどうしても納得できない時H田さんが
「君は考えなくてもいいから、とりあえずこちらの言う通りに書いてみなさい」
と言った言葉です。こうしてそこだけ書くと、とてもひどい事を言われている様ですが、
(実際その当時はとても腹が立ったものです)後になってみると、
ただ僕が若かったので変なこだわりがあった為に、
物事に対する視野が狭くなっていただけの事でした。
この『タイマンゴルファー勝』ではいろんな意味で勉強させられました。




5.必ず勝つと解っている主人公

少年漫画の勝負モノの原則としてよく言われる言葉に
友情、努力、勝利をテーマに盛り込む事、というのがありますが、
この3つのテーマのうちでもっとも大切なものは何でしょうか?
僕の経験からするとどうやらそれは『勝利』のようです。
つまり、主人公がどんなに友達と友情を深めても、
また、主人公がどんなに血の滲むような努力をしても
結局勝利を納めなければ読者は喜ばないんですよね。

この考えはあくまで僕のつたない経験の元に生まれた偏見ですが、
漫画を書こうなどと思う者や漫画家になろうと思う者は
すでに既成の作品には嫌気がさしている為に、
今までに無い新しいモノを書こうとします。
しかし多くの漫画を書こうとは思わない読者は、
案外既成のパターンがお気に入りなんです。

一般の読者が毎週の様に雑誌を買って漫画を読んでくれるのは、
毎回毎回主人公がどんな絶望的なピンチに陥っても、
最後には必ずそこから立ち直って勝利を納めてくれるからです。
現実にはどんなに努力しても報われなかったり、
友達との絆はもろくも崩れさったりしますし、
なんと言っても毎回必ず勝負に勝てる訳はありません。
そこで読者は漫画の中に理想を求めるんですよね。

そこで読者に喜んでもらう漫画を書くにはどうするかと言うと、
まず、必ず勝つと解っている主人公を設定します。
そして、その主人公がいかに勝利を納めていくかを考えて、
それから倒されるべくして倒される相手を考えて、
さらに主人公を窮地に追い込むエピソードを考えるのです。
もちろん、読者にはすぐに結末が解らない様に、
どの展開もオブラートに包む事を忘れずに……。
と言ったところですがよくよく考えてみれば、
この『タイマンゴルファー勝』はその原則に則って作られたのに、
全然ヒットしなかったので皆さん信じない様にね。




6.お世話になった編集さん

この作品の連載を2年半続けた間にいろんな人にお世話になりました。
特に担当してくれた編集さんには本当に感謝をしています。
まず僕が上京した時から4年間くらいお世話になったS木さん。
この人とは数え切れないくらい衝突を繰り返しましたが、
実にやる気と情熱に溢れた人でした。
彼が担当を離れると知った時は寂しくなったものでした。

次にこの漫画を始めるキッカケを作ってくれたH田さん。
直接担当してくれたのは1年余りでしたが、
彼がいなければ僕はゴルフの素晴しさに気がつかなかったでしょう。

H田さんの後に担当に加わったS谷さん。
ひじょうに調整力に優れた編集さんでした。
僕とS木さんが対立した時はよく仲に入ってなだめてくれたものです。

最後にやはり連載途中から担当に加わったT橋さん。
副編集長という忙しい立場だったのにも関わらず色々と面倒を見て頂きました。
この人によって僕の漫画のレパートリーが広がりました。
以上の皆さんどうもありがとうございました。
あまり僕が出世していないのでまだお世話になった礼を返していませんが、
何とかそのうち立派になった姿を見せたいものです。




7.ゴルフ漫画の難しさ

ゴルフ漫画と言うと昔の作品でいえば『プロゴルファー猿』や、
『あした天気になあれ』や『ホールインワン』などがあります。
最近でも少年誌で何本か書かれているので
それなりに読者の需要はあるみたいですが、
僕がゴルフ漫画を書いている時に考えたのは、
いかにゴルフを知っている読者と知らない読者の
ギャップを無くすかと言う事でした。

これがゴルフ専門誌に載っている漫画であれば、
読者はゴルフを知っているという前提で話を進められますから、
余計なルール説明や主人公の置かれた状況がいかに難しいかという、
状況説明にページを割く事なく話を書く事が出来ます。
しかし僕の書いていたマガジンスペシャルという雑誌は
読者が必ずしもゴルフを知っているとは言えません。
むしろ知らない人の方が多かったんじゃないかと思います。
そこでゴルフを知らない人でもいかに理解できるか、
そしてゴルフを知っている人がいかにしらけないか、
このバランスを考えてルール説明や状況説明をしました。

さらにゴルフ漫画を書いていて難しさを感じた事は
ボールを実際に打った事のある人の視点で描くのか、
TVの画面でプレーを見ている人の視点で描くのか、
そのバランスというか配分です。
またこの漫画の主人公は見かけは子供でもゴルフの腕前は、
一流のプロゴルファーに負けない位なので、
へたくそな人間とはプレー中の心境が違います。
そのためいわゆる読者に感情移入させにくいと言う事です。

この漫画はとりあえず2年半という僕にとっては長く続いた作品で、
しかも僕自身にゴルフの面白さを教えてくれた漫画です。
しかし作品中でゴルフがいかに面白いものかと言う事を、
書き切れたという気持ちにはなれません。
いずれもう一度ゴルフ漫画を書く機会があれば、
ぜひこの漫画で表せなかったゴルフの面白さを書いてみたい、
今でもそう思っています。




解説のあとがき

おつかれさまでした!!



この漫画を書き終えてからすでに5年程経っています。
僕は昔の自分の作品を読み返さないので一体どんな話を書いたのか、
正直なところもうほとんど覚えていません。
そこで作品の解説といいながら余り解説していません。
ただこの漫画を書いていた時に自分の感じた事を、
覚えている限り綴ってみました。
この『タイマンゴルファー勝』を知っている人には物足りなく、
知らなかった人には意味が解らない解説だったかも知れませんが、
ここまで読んでくれた人には感謝します。
どうもありがとうございました。





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